たっぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり 河野裕子の歌

 歌人の河野裕子さんの息子さんである永田淳さんが
 本を出した

 『評伝 河野裕子』
 家族として 息子として
 母親である歌人の歌(作品)を取り上げながら
 母親の生涯を綴る

 その母親の思い
 その見つめる先
 歌人としての母親の作家に対する根源的資質とは何かと

 その本のタイトルの脇に
 この歌人の詠んだ歌が在る
 「たっぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり」

 歌集『桜森』に収録されている近江を詠んだ歌
 河野裕子さんがまだ二十代の終わり頃に詠んだ歌
 結婚して東京で暮らしていたが
 馴染めず
 欝々としていたようだ

 何しろ東京には<自然>というものが無かったから
 河野さんはそう感じたらしい

 そうした時に
 初めて離れてみて見えてくる<風土>というものが
 在るということに気付いた

 そう河野さんはこの歌について講演の中で語っている

 近江は
 <近江と言うのは勿論滋賀県のこと>
 真夏であっても
 どこかしーんと暗くて静かだったと
 思い出すのである

 何故そうなのだろうか・・
 そう考えを巡らすうちに
 そうだ!
 と気付く

 それは近江という風土が
 たっぷりとした真水を
 琵琶湖を
 抱いていたからなんだと

 そんな近江の地を
 河野さんは<昏き器>と表現したと
 そう語っている

 「たっぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり」

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by hai-toku | 2015-09-22 07:11 | 徒然 | Comments(0)