ブログトップ

KONMU(ねなし草)

2017年 04月 16日 ( 1 )

『苦海浄土』」を読めるか

 その本の分厚さに
 読む前から諦めていた
 読めないだろう・・
 根気が続かない
 勝手にそう決めつけていた

 三月に開かれた
 「石牟礼道子の宇宙」(主催 藤原書店)というシンポジウムについて
 朝日新聞に記事かあった(3月22日朝刊)

 熊本の病院で療養している
 石牟礼さんに記者がインタビューしている

 “誰に読んでもらえるとも思わず
 一人で戦うつもりで書きました
 「もだえてなりと
 加勢せんば(もだえることしかできなくても
 加勢しなければ)」
 という気持ちでした

 何もできない私です
 せめて患者さんのそばで
 一緒にもだえることしかできないと
 思ったのです”と
 そんなふうに話す

 池澤夏樹個人編集の「世界文学全集」の
 一巻に『苦海浄土』が収められている
 その巻の解説で池澤さんは
 こう書く

 “なぜ石牟礼道子に『苦海浄土』が書けたのだろう?
 日本社会に社会的不正は多く
 たった今の沖縄を見ればわかるとおり
 大規模な受苦は珍しくないのに・・
 ・・
 石牟礼道子は水俣に住む人々の幸福を知っていた
 充分に知っていた
 それが無残に失われたという事実が彼女を背後から押した”と

 “居るべき場に必ず立ち会う証人・目撃者になり
 ・・患者の「つきそい」を務め
 その見聞のすべてを自分の魂の内に引き込み
 玄妙な変成作用を経た成果を書き記した”と
 『苦海浄土』の世界を伝える

 4月14日付の宗教紙「中外日報」の社説
 “都市に群れるハトは
 人になれ過ぎて危険が迫っても逃げようとしない
 その習性が
 時代の危うい空気に鈍感な今の世とどこか重なり合うという意味の警句”
 「都会のハト」の例えについて書く

 “人は見たいものだけを見る
 見たくないものは大切なことであっても
 知らない方が心地いいから見て見ぬふりを決め込む
 見て見ぬふりは増殖し
 外部からはとんでもない状況に見えても
 当事者は気付かない

 やがて破局を迎え
 「なぜ気付けなかったか」とぼうぜんとするのがその結末だ“と

 “都会のハトを笑えない”と警告する

 “かつて「日本精神」を称揚する書籍の出版ブームからわずか数年後
 日中戦争が本格化した
 全体主義は権力と世論が共振し合って高揚するというが
 自己の望む情報だけに浸れるネット社会には
 集団の暴走が起きる危険性も潜む
 社会の異常への気付きを促す役割を
 誰かが担わねばならない”と結ぶ

 書店に並ぶ本
 “たとえば書店には自国を美化し
 隣国を貶める本が山積みにされ
 それなりに売れているらしい
 極めて危うい風潮です”
 雑誌『世界』の5月号でも
 原武史さんはそう語る
  (座談会「象徴」のゆくえ)

 「中外日報」の社説や
 『世界』の座談会での原さんの<言葉>
 同じように
 現在(いま)の時代を読み取る

 「誰かが担わなければならない」とのメッセージ
 
 石牟礼さんは言う
 「何もできない私」と

 その私
 決して<鈍感>な私ではない
 世の中と無縁ではない

 だからこそ
 『苦海浄土』を読んでみようと
 そう思い直した

[PR]
by hai-toku | 2017-04-16 14:29 | 読書 | Comments(0)

学生時代の同人誌のタイトルです             
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30