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KONMU(ねなし草)

カテゴリ:童話でない童話( 6 )

あ~インタナショナル(6)

 「それじゃ あなたはぼくがやったと同じように 
 こうして」と
 ぼくは彼らのために
 左足を上げてやりました

 「こうして 左足を上げて地面についてみるがいい
 その瞬間に君らの足が地面に吸い込まれるか
 あるいは足が地面に着く前に
 君らの姿は
 (これ このとおりでござ~い)と
 魔術のようにあとかたなく消えてしまうかもしれないよ」

 ぼくはゆかいでした
 実にこんなにゆかいになるとは
 マジック・ミラーの前に立つときには
 思いもよらぬことでした

 ぼくはじっと耳を澄まして
 彼らのごく小さなささやきものがさぬようにと
 みがまえていました

 何も変わったことは起こりません
 しかも 先ほどまで
 ぼくの六感に来ていた何かの気配は
 もう ありませんでした

 彼らは消え去ったようです
 ぼくははなで笑ってやりました
 ここにはぼくしか存在できないんだ
 いや ぼくしか存在していないんだと

 ぼくはそれでも不安な気持ちになって
 そっとふり向いて
 マジック・ミラーを見ました
 
 そこには ありがたいことに
 しょぼくれたぼくしか映っていませんでした
 ぼくはいよいよゆかいになりました
 ぼくは天国にいるような気持ちです
 希望がわいてきました
 
 もう何もくよくよと心配することはないようです
 ぼくはそう思うと
 今度は何をするのかと考えました

 ぼくの頭 電子計算機は
 実にすばやく答えをはじき出しました
 その答えは
 アナタハアナタハ スグケッコンスベキデス
 ソノヒトノナハ・・・

 いや そうではありません
 もっとまじめに書かなくてはなりません
 その答えは ぼくの問題は
 『自立の精神』ということでした 

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by hai-toku | 2015-06-28 17:54 | 童話でない童話 | Comments(0)

あ~インタナショナル(5)

 ぼくはそのぷっくりふくれた頭に
 つばをつけた右手をやって
 そろりそろりとまじないをしました
 それだけでは終わりません
 ぼくの左足のひざ小僧は足首の代役をつとめ
 おもいきり地面にあたったものですから
 こちらの方は赤い血がふき出していました
 ぼくは何ともいえない気持ちになって
 というのは
 ぼくは血を見るとますます痛みを感じる方ですので
 ですからぼくはとても恥ずかしくて
 形容しがたい顔つきになっていました
 でも
 この苦しい実験の結果
 ぼくはとにかくマジック・ミラーの前に立っているということを
 確認しました

 「あなたはこれを馬鹿馬鹿しいと仰るのですか」
 ぼくは後ろをふり向きぎわに
 少々相手を怖がらすために
 わざと半音高くこう言って
 何もない空間を指さしました
 
 ぼくの手は何もない空間を指さしています
 でもぼくはそれに何の不自然さも感じませんでした
 ぼくはマジック・ミラーに無数の目を感じていましたし
 ぼくの後ろで何かが笑い合っている声を聞いていたからです

 「あなたはそうしてぼくを笑っていますが
 あなたは本当に
 あなたがそこに存在していると思っているのですか」

 ぼくは多少優越感にみちて
 その姿なき相手に言いつづけました
 ぼくの左足のひざ小僧からは
 まだ血がにじみ出ているようです
 ぼくはそのことに満足でした
 そのことはますますぼくの確信を揺るぎないものにしたからです
 
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by hai-toku | 2011-10-30 10:32 | 童話でない童話 | Comments(0)

あ~インタナショナル(4)

 ぼくはくたひびれた服を着ています
 いつもこの服です
 しわくちゃでよれよれの黒ずんだブレザー
 ぼくは大変ぶかっこうです
 そして・・・いや
 そんなことはどうでもよいのです
 ぼくは少々怒ったようです
 ぼくは今
 自分がマジック・ミラーの前に立っているかを
 確かめる必要があるのです
 ぼくのメガネがこわれていないのなら
 もう一つ大切なことは
 このマジック・ミラーが鏡としての役割を十分果たしているのなら
 ぼくは今ここに存在しているのです

 ぼくは自分を映してみることができました
 それからぼくは恐る恐る左足をあげてみました
 ぼくはもう一度マジック・ミラーをみて
 ひと安心しました
 鏡の主も足をあげていましたから
 そして
 ぼくはおもいきりそのあげた足を
 地面にたたきつけました

 「ガーン」という大きな反響がぼくの耳にひびきました
 ぶさいくなことに
 ぼくはおもいきり足を地面に着こうとして
 足元の小石につまづいて
 ぼくは前にあるマジック・ミラーに
 これまたおもいきり頭をぶつけたのです
 幸いなことに
 マジック・ミラーはぼくの鼓膜を破らんばかりの音をたてただけで
 こわれませんでした
 その代わりにぼくの頭がぷっくりとふくれています
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by hai-toku | 2011-07-27 08:57 | 童話でない童話 | Comments(0)

あ~インタナショナル(3)

 ぼくはすっかり脳を洗い出さなければなりません
 そして隅の方に残る潜在意識を
 残らず暴露しなければならないのです

 しかし結局のところ
 そのような微細な意識を綿密に取り出すならば
 この物語は
 書けども書けども終わらないかもしれません
 それでもぼくはそこに何らかの成果を期待して
 この物語を書き続けます

 果たして結末が得られますかどうかは
 ぼく自身がそれを保証することはできませんが
 ぼくは書き続けるでしょう
 それでは皆さん
 “あ~インタナショナル”
 (インターナショナルではない 念のため)
 いかがなりますことか
 最後までお付き合いのほどを
 ・・・・・・はあ、途中でトイレに行きたく
 なられたらですか
 そのときはどうぞご遠慮なく
 何よりも健康が大切です

 ☆

 ぼくはマジックミラーの前に立って
 静かに自分を見つめている
 “静かに”ということが
 ここでは一番大切なのです

 ここでは沈着なポーズが必要なのです
 ぼくは今
 マジックミラーの前に立っている
 これは事実なのです

 いや事実かどうか確かめてみる必要があります
 それが事実でなかったら
 そこにぼくは存在していないのですから
 ぜひとも心を落ち着けて
 確かめてみる必要があります
 そうそうゆっくりと
 息を整えて
 “静かに”“静かに”
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by hai-toku | 2010-03-30 08:36 | 童話でない童話 | Comments(0)

あ~インタナショナル(2)

 あ~インタナショナルのためのまえがき

 ぼくは子どもの頃、よく星をみていました
 冬空の星が一年中で一番よく輝いているようでした
 ぼくのまわりのすべてが
 善意に満ちているように思いました

 そしてすべてが夢の世界でした
 ごく俗に言われるところの
 花や鳥も
 風や山も
 それから京都や日本や地球

 それから
 それから宇宙も
 すべてが素晴らしい世界を作っていました
 ぼくはその時
 けがれを知らぬ子どもでした

 ぼくは今星を見ています
 この星はどことなく沈んだ色で
 ぼくが期待する輝きはありませんでした
 それでも星はぼくの手の届かない
 遠い
 遠い宇宙にあるのです

 その宇宙はどんなにか広いことでしょう
 地球は太陽系の一つの惑星です
 太陽系は
 それよりはるかに大きい銀河系のはずれにある
 一点に過ぎません

 そのまた銀河系は
 またまた
 それよりはるかに大きい・・・
 行けども行けども
 ぼくたちのはかり知れぬ広さで
 宇宙は存在しているのです

 ぼくはむなしくなりました
 人間の一生も
 この宇宙の前では
 ごくごく短い時でしかありません

 そこで毎日のように
 繰り返される茶番劇などは
 うっかりすると記録されぬもの
 (「時」とは呼べないもの)なのでしょう
 しかし
 それだからこそ
 ぼくたちの生きる価値が
 あるのかも知れません059.gif  

 
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by hai-toku | 2010-03-29 09:55 | 童話でない童話 | Comments(0)

あ~インタナショナル(1)

 まえがきのためのまえがき

 僕は最近、北杜夫の「さびしい王様」という本を読みました。
 この作者によると北杜夫はキタモリオと読むそうです。
 僕は本当に何もかも忘れて、この本に熱中しました。
 それは僕の精神構造が、10歳程度であるからかも知れません。
 とにかく僕は、限りない夢を与えられたように思いました。
 作者はこう言っています。「大人の社会にうんざりした"大きな子ども"
 に送る新しい童話」だと。事実、僕たちには夢が必要です。
 しかしながら現実には、僕たちの日常生活では、
 夢は広がるどころか無感動な明日が
 いつもと変わらぬスケジュールで繰り返しているだけなのです。
 僕たちの意志とは無関係に、もう一人ひとりのスケジュールは
 刷り上っているのです。僕たちは、ただ与えられた一本のレールの上を
 落ちないようにと、必死にしがみついているだけなのです。
 僕はとにかく、北杜夫の作品を読むのはこれが始めてなのですが、
 (彼の名はマンボウシリーズなどで知ってはいましたが、)僕は
 大層な彼のファンになりました。僕は、直感的にですが、
 彼がさびしい人間のように思いました。
 そうです、彼は孤独な人間です。さまなくば、
 どうしてこのような作品が書けましょうか。

 実は僕はこの「さびしい王様」を読む以前から
 「自立の精神」という、例の如く、安保がどうの、唯物史観がどうのという、
 まったくくだらぬエッセーを書こうとしていたのです。
 僕はうまく書けませんでした。それは、表現を難解にすればする程、
 自己を美化し、自己の本心を自然と隠してしまうからです。
 僕はその潜在化された本心を吐き出さなければなりません。
 いつまでも、自己を偽ることはできないのです。
 僕はそのために、まえがきを書く必要があったのです。
 「さびしい王様」は、一体誰なんでしょうか。

 (40年前にガリ刷りに書いた駄文)
  
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by hai-toku | 2008-08-19 20:41 | 童話でない童話 | Comments(3)

学生時代の同人誌のタイトルです             
S M T W T F S
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