『苦海浄土』」を読めるか

 その本の分厚さに
 読む前から諦めていた
 読めないだろう・・
 根気が続かない
 勝手にそう決めつけていた

 三月に開かれた
 「石牟礼道子の宇宙」(主催 藤原書店)というシンポジウムについて
 朝日新聞に記事かあった(3月22日朝刊)

 熊本の病院で療養している
 石牟礼さんに記者がインタビューしている

 “誰に読んでもらえるとも思わず
 一人で戦うつもりで書きました
 「もだえてなりと
 加勢せんば(もだえることしかできなくても
 加勢しなければ)」
 という気持ちでした

 何もできない私です
 せめて患者さんのそばで
 一緒にもだえることしかできないと
 思ったのです”と
 そんなふうに話す

 池澤夏樹個人編集の「世界文学全集」の
 一巻に『苦海浄土』が収められている
 その巻の解説で池澤さんは
 こう書く

 “なぜ石牟礼道子に『苦海浄土』が書けたのだろう?
 日本社会に社会的不正は多く
 たった今の沖縄を見ればわかるとおり
 大規模な受苦は珍しくないのに・・
 ・・
 石牟礼道子は水俣に住む人々の幸福を知っていた
 充分に知っていた
 それが無残に失われたという事実が彼女を背後から押した”と

 “居るべき場に必ず立ち会う証人・目撃者になり
 ・・患者の「つきそい」を務め
 その見聞のすべてを自分の魂の内に引き込み
 玄妙な変成作用を経た成果を書き記した”と
 『苦海浄土』の世界を伝える

 4月14日付の宗教紙「中外日報」の社説
 “都市に群れるハトは
 人になれ過ぎて危険が迫っても逃げようとしない
 その習性が
 時代の危うい空気に鈍感な今の世とどこか重なり合うという意味の警句”
 「都会のハト」の例えについて書く

 “人は見たいものだけを見る
 見たくないものは大切なことであっても
 知らない方が心地いいから見て見ぬふりを決め込む
 見て見ぬふりは増殖し
 外部からはとんでもない状況に見えても
 当事者は気付かない

 やがて破局を迎え
 「なぜ気付けなかったか」とぼうぜんとするのがその結末だ“と

 “都会のハトを笑えない”と警告する

 “かつて「日本精神」を称揚する書籍の出版ブームからわずか数年後
 日中戦争が本格化した
 全体主義は権力と世論が共振し合って高揚するというが
 自己の望む情報だけに浸れるネット社会には
 集団の暴走が起きる危険性も潜む
 社会の異常への気付きを促す役割を
 誰かが担わねばならない”と結ぶ

 書店に並ぶ本
 “たとえば書店には自国を美化し
 隣国を貶める本が山積みにされ
 それなりに売れているらしい
 極めて危うい風潮です”
 雑誌『世界』の5月号でも
 原武史さんはそう語る
  (座談会「象徴」のゆくえ)

 「中外日報」の社説や
 『世界』の座談会での原さんの<言葉>
 同じように
 現在(いま)の時代を読み取る

 「誰かが担わなければならない」とのメッセージ
 
 石牟礼さんは言う
 「何もできない私」と

 その私
 決して<鈍感>な私ではない
 世の中と無縁ではない

 だからこそ
 『苦海浄土』を読んでみようと
 そう思い直した

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# by hai-toku | 2017-04-16 14:29 | 読書 | Comments(0)

春の雨

 ♫春の雨はやさしいはずなのに・・♫
 若い時によく口ずさんでいた小椋佳の歌が
 浮かんだ

 外はどんより
 ようやく咲いた桜の花は
 足早に花を開かせたが

 無情の雨が
 邪魔をする

 ♫春の雨はやさしいはずなのに・・♫

 この季節
 この世界

 先日亡くなった詩人大岡信さん
 二十歳の時の詩
 「・・
 おま
 お
 
 今
 ・・」
  (『春のために』の一節)

 おまえの手
 ぼくの手
 おまえのつぶて
 ぼくの空

 見上げてみよう
 今日の空
 虚しさに打ち克つために

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# by hai-toku | 2017-04-08 11:42 | 徒然 | Comments(0)

エイプリルフール

 先日行われた京都大学卒義式
 式辞を述べた山極総長は
 当時1回生として京大に在籍した頃の話を
 語っています

 “目の前で繰り広げられた割腹自殺という前時代的な行為が
 つい25年前の戦時中に
 当たり前のようにしてあったことを思い出したのです
 また
 そのとき三島たち盾の会が掲げた
 「憲法改正によって自衛隊を軍隊にしよう」という檄文に
 自衛隊員ですら誰も従おうとはしなかったのです”と

 その当時のことを
 私も覚えています
 衝撃的な事件でした

 21世紀の今
 今朝の朝日新聞一面のトップは
 「教材に教育勅語「否定せず」」の見出し

 エイプリルフールにしては
 悪ふざけが過ぎます
 そう思っていましたが

 どうやらそうではないようです
 “「憲法や教育基本法等に反しないような形で
 教材として用いることまでは否定されることではない」”との
 答弁書を閣議決定したようです

 「教育勅語の中の親孝行とかは良い面だ
 文科省が言う
 丸覚えさせられることに
 問題があるということは
 どうなのかと思う」と

 臆面もなく
 答弁する大臣をスルーしてしまう
 今の政治状況にも一因があるのでしょうが

 「教育勅語」の時代とは
 どんな時代だったのか
 歴史を振り返る必要があるようです

 尤も
 「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意は
 素晴らしいと聞いている」と
 のちには発言を翻した
 安倍首相のこの<言葉>の方が
 ダメージが大きいように思いますが

 時代の分岐点にいることを
 ひしひしと感じます

 エイプリルフールと
 冗談が言いあえる
 そんな世の中であれば
 良いのですが

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# by hai-toku | 2017-04-02 11:03 | 気になる言葉 | Comments(1)

「夢」のつづき

 夜中に目を覚ます

 というより
 眠ってそんなに時間は経っていない

 11時に眠って
 早くて0時半
 トイレに立ち上がる

 それだけではない
 3時半
 また立ち上がる

 そのあとも
 うとうと と
 眠っているのだろうが

 眠りは浅い
 その時の時間を覚えているような
 そんな眠り

 おまけに
 ずっと「夢」を見ているような気分

 その「夢」は近頃の出来事と交差している

 目覚めた後も
 ぼんやりと思い出せる

 住井すゑさん
 『橋のない川』の著者

 その娘さんが
 『住井すゑ ペンの生涯』という本を書いている

 その娘さんは
 「1929年東京生まれ」だという
 著者の紹介欄にそう書かれていた

 何と
 それなら
 住井すゑさんは何年生まれ・・?

 「1902年」
 「明治でいうと35年」
 本を読むとその年が分かる

 この時代に
 この人ありだ

 “・・母は悩みの中から人間平等の本質というか
 ゆるぎなき認識を獲得するわけです”

 “平等だと思うのに現実にはなぜ格差というものがあるのだろう
 ・・こういう状況はどうしておきるんだろうかということを
 非常に疑問に持つ
 この疑問を心のなかで育てる
 そしてなんとかして自分の力でこの疑問を解く
 この意固地さが母のユニークさなんだと思います”と

 住井すゑさんとは
 そんな人だったのです

 “・・校長先生が「このとんでもないやつが・・」とはじまった話のなかから
 母は幸徳秋水というひとは
 この世の人間は皆平等だと言っているのだと察知したのです
 母はーまあこのあたりが母らしいところですけどー
 先生が幸徳秋水は大悪人だと言っているときに
 「この人は私にとっては神様のような人だ」と受け取るわけです
  判断の基準というものを自分のなかにもっている・・”

 大事ですね
 「判断の基準を自分の中にもっている」

 今朝の新聞
 「池上彰の新聞ななめ読み」を読むと
 道徳の時間が“「特別の教科」という位置づけに格上げされ
 文部科学省検定教科書を使い
 成績評価も実施されることになりました”と

 果たしてそれで
 どんな効果が得られるものやら
 「判断の基準を自分の中にもっている」危うし!
 ですね

 池上さん
 つづきに
 “なにせ「教育勅語」にはいいことも書いてある
 などという政治家が存在する時代ですから”と
 皮肉たっぷり

 そんな皮肉を書ける間は
 良いのですが・・

 さてさて
 「夢」のつづき
 明日はどうなることやら

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# by hai-toku | 2017-03-31 12:07 | 徒然 | Comments(0)

学生時代の同人誌のタイトルです             


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