九冊目の歌集『歩く』

 歌人の河野裕子さんの九冊目の歌集が『歩く』である
 この『歩く』で河野さんは宇治市の紫式部文学賞を受賞している

 もっともご本人は
 この歌集で第六回の若山牧水賞も受賞していることの方が
 印象深かったのかもしれない

 なぜなら
 若山牧水賞の第三回の受賞者が
 夫の永田和弘さんであったからだ

 前年の秋に
 河野さんは乳癌の手術を受け
 “そのあとしばらく
 歩く力が戻らなかった”という

 だから
 “歩くということが
 どんなに大切なことであるかをしみじみと感じていた”と
 記している

 迷わず
 歌集のタイトルは『歩く』にしたという
 “タイトルに励まされながらまとめた歌稿”だという

  ゆっくりと 治ってゆかう 陽に透けて 横に流るる 風花を吸う
 『歩く』に収められた一首
 「ゆっくりと」という<ことば>が
 河野さんの気持ちを表している

 手術後九年目の歌
  いつまでも 伴侶で居られる 筈もなし 手術後九年が そおっと過ぎた

 “人間には生涯にただ一度という出会いというものがあり・・”と
 女人高野室生寺に訪れた際に
 「出会い」についての心境を
 そう表現する
 
  みほとけよ 祈らせ給へ あまりにも 短きこの世を 過ぎゆくわれに
 “人がこの世に生きられる時間はあまりにも短い
 それを思わないではいられない
 六十余年を生きてきただけのわたしの実感である”
 そんな河野さんの一首である

 河野さんが遺したエッセイをまとめた
 『わたしはここよ』(白水社)という本を読んだ

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# by hai-toku | 2017-03-19 18:58 | 読書 | Comments(0)

山宣の墓

 県神社から平等院の正門に向かう道
 最初の信号の交差点を右折すると
 坂道になっている

 その坂道を上っていくと
 (善法)墓地がある

 その墓地の中に
 「花屋敷 山本家之墓」と書かれた
 墓碑がある

 「花屋敷」とは
 現在も宇治川左岸にある旅館
 「花やしき浮舟園」を指す

 その家に生まれた一人が
 山本宣治
 1928年の初の普通選挙で当選し
 労農党の代議士となり
 治安維持法の強化に反対して
 暗殺された

 宣治という名は
 宣教師の「宣」という字と
 明治の「治」(宇治の「治」ではなかったようだ)をとって
 両親が名付けられたそうだ

 台石の北側には碑文が刻まれている
 “同志山本宣治の
  最後の演説から
  山宣ひとり孤塁
  を守る
  だが私は淋しくない
  背後には大衆が
  支持しているから
  大山郁夫書”

 西側には
 “昭和四年三月建之多年子”と書かれている
 多年とは山宣の母の名である

 命日にあたる3月3日には
 毎年墓前祭が開かれている 

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# by hai-toku | 2017-02-22 12:06 | 京都 | Comments(0)

尹東柱詩集『空と風と星と詩』「序詩」

 죽는 날까지 하늘을 우러러
 한 점 부끄럼이 없기를,
 잎새에 이는 바람에도
 나는 괴로워했다。
 별을 노래하는 마음으로
 모든 죽어가는 것을 사랑해야지
 그리고 나한테 주어진 길을
 걸어가야겠다。

 오늘밤에도 별이 바람에 스치운다。

 尹東柱詩集『空と風と星と詩』の初め
 「序詞」をハングルで書いてみた

 ハングルを読めないので
 どう読むのか知らないが
 岩波文庫の金時鐘さんの編訳では

 “死ぬ日まで天を仰ぎ
  一点の恥じ入ることもないことを、
 葉あいにおきる風にさえ
 私は思い煩(わずら)った
 星を歌う心で
 すべての絶え入るものをいとおしまねば
 そして私に与えられた道を
 歩いていかねば。

 今夜も星が 風にかすれて泣いている。”と訳す

 この詩は1941年の11月20日の作ったと記されている

 岡部伊都子さんの『遺言のつもりで』(藤原書店)の中では
 伊吹郷さんの訳で

 “死ぬ日まで空を仰ぎ
  一点の恥辱(はじ)なきことを、
 葉あいにそよぐ風にも
 私は心を痛んだ
 星をうたう心で
 生きとし生けるものをいとおしまねば
 そしてわたしに与えられた道を
 歩みゆかねば。

 今宵も星が風に吹き晒される”と
 こう訳されている

 いずれの訳にも心を打たれるが
 原文の尹東柱(ユンドンジュ)さんの思いを伝えきっているのだろうか

 「風に思い煩い そよぐ風に心を痛める」
 「星を歌う心ですべてのものをいとおしむ」とは

 「私にあたえられた道」とは
 その道を「歩まねば」と思う心は・・

 “尹青年は京都でどんなに多くの詩を書かれていましたのか、
 時代とコリアへの純粋なお気持ちが、このアキの一行にこもっています”と
 岡部さんは本の中で書かれている
 
 思いこもる人々として「尹東柱詩人」の名を挙げ
 <純粋な美しさ、若く散らされた>という文字を添えている 

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# by hai-toku | 2017-02-21 11:40 | 読書 | Comments(0)

「京のええとこ連れてって」宇治のええとこ

 先日
 午後6時半からのNHK京都放送局の
 「京いちにち」というニュース情報番組

 「京のええとこ連れてって」というコーナーで
 宇治を話題にしていた

 短歌の枕詞
 “ちはやぶる”に隠された
 宇治との深~い関係
 
 と興味をひく

 実は
 “ちはやぶる”とは
 「神」と「宇治」だけにつく枕詞

 その名も
 「ちはやぶる宇治の未来を創る会」のみなさんと
 レポーター役を務めるNHKのアナウンサーが
 宇治川の右岸 左岸
 大吉山を訪れて
 その隠された謎に迫るという話

 「ちはやぶる宇治の未来を創る会」は
 「宇治の知られざる魅力を
  地域への誇りを
  掘り起こし
  発信を目指す」という人たち

 そんな「会」があるなんて
 <知らなんだ・・>

 “ちはやぶる 宇治の橋守 なれをしぞ あはれとは思ふ 年のへぬれば”

 “ちはやぶる 宇治の渡に 棹取りに 速けむ人し 我がもこに来む”

 あるある
 “ちはやぶる”だ

 宇治川右岸のさわらびの道
 宇治上神社を過ぎた辺りに
 与謝野晶子の「宇治十帖歌碑」が建つ

 そのすぐ北側
 大吉山の登り口に
 “そらみつ倭(やまと)の国あおによし奈良山越え
 て山代(やましろ)の管木(つつき)の原ちはやぶる宇治の渡(わたり)
 ・・”と

 ここにも“ちはやぶる”の「万葉歌碑」

 宇治川左岸の「宇治市観光センター」の前にも
 “ちはや人宇治川
 波を清みかも旅
 行く人立ちがて
 にする”という「歌碑」が建つ

 宇治川の川波があまりにも
 清らかであるからであろうか
 旅人たちはここから
 立ち去り難く思っている

 そんな意味だろうか
 <宇治はええとこなんや>ね037.gif

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# by hai-toku | 2017-02-19 17:54 | 京都 | Comments(0)

学生時代の同人誌のタイトルです             


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