北杜夫の世界 その1

 この人の世界はとてつもなく広い
 そして不思議な空間だ

 北杜夫

 若い日
 この人の書いた本を次から次に読んだ

 『夜と霧の隅で』『幽霊』『木精』
 『星のない街路』

 そうした作品とまつたく違った作品が
 『どくとるマンボウ・・』のシリーズ
 そして
 『さびしい王様』『さびしい乞食』
 この本を読んで
 実は
 童話でない童話『あ~インタナショナル』を書いた
 カテゴリに設定しているものの
 中途半端なままにしている

 北杜夫さんのお父さんは
 歌人で精神科医の斎藤茂吉さん
 お兄さんは
 精神科医でエッセイストでもある斎藤茂太さん
 自身も精神科医であったことは
 よく知られている

 『木精(こだま)』は
 ー或る青年期と追憶の物語ーとの副題が付いていて
 父茂吉の歌が第一章の前に添えられている

 “はるかなる国とおもふに狭間には
 木精おこしてゐる童子あり”
 この詠まれた歌の<木霊>を題名にしている

 『幽霊』には
 -或る幼年と青春の物語ーとの副題が付く
 “人はなぜ追憶を語るのだろうか”
 その最初の<言葉>が読む者をその世界に引き込む

 “どの民族にも神話があるように
 どの個人にも心の神話があるものだ”
 <心の神話>・・
 
 “その神話は次第にうすれ
 やがて時間の深みのなかに姿を失うように見える
 -だが
 あのおぼろげな昔に人の心にしのびこみ
 そっと爪跡を残していった事柄を
 人は知らず知らず
 くる年もくる年も反芻しづけているものらしい”

 何とも言えぬ味わいの或る
 凝縮された<言葉>・・

 人の心の中(人生)に深く刻まれた爪跡
 それを<追憶>と呼ぶのだろうか
 若い日
 この一文に酔った
 そんな魅力のある世界を提供してくれた作家
 それが北杜夫さんだった 
[PR]
by hai-toku | 2011-10-27 11:06 | 読書 | Comments(0)